上原沙也加
緑の部屋
2024年4月13日(土)–6月1日(土)
オープニングレセプション:2024年4月13日(土)16:00-19:00
開廊時間:火−土(日月祝休)12:00-19:00
休廊日:4/28(日)-5/6(月), 日月祝日
Press Release
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MISA SHIN GALLERYは、4月13日(土)から6月1日(土)まで、上原沙也加の個展「緑の部屋」を開催いたします。
上原沙也加は、出身地である沖縄の、多様な文化や背景が入り混じる細部の表情を淡々と撮影し、その断面に歴史や時間が重層的に立ち現れる作品を制作してきました。
2023年夏、上原は1ヶ月ほど台湾に滞在し、さまざまな場所を撮影しました。台湾で訪れた場所や滞在中に出会った出来事をもとに制作されたシリーズ「緑の部屋」は、政治的変遷を経て残る建物や場所の風景、さらにそこから持ち帰ってきた事物を撮影した写真とテクストから構成されます。
原住民族が暮らしていた台湾島は、17世紀以降、オランダ、スペイン、明、清、日本とさまざまな勢力に支配され、複雑な歴史を辿ってきました。展覧会のタイトル「緑の部屋」の「緑」は、台湾で長年歌い継がれている歌や、深い山の風景に由来します。
本展では、「緑の部屋」シリーズより、本年のVOCA展2024で奨励賞、大原美術館賞を受賞をした「幽霊たちの庭」に加え、初公開となる新作「花売りのおばあさん」を発表します。
「幽霊たちの庭」は台湾・花蓮にある日本統治時代に建てられた松園別館を撮影しています。沖縄では戦災で多くが消失した琉球松が、この庭では現在でも大きな枝をのばしています。綴られているテクストには、松園別館に展示されている資料写真と、不在のイメージが対比され、かつてそこにあった日々や人々の気配へと想像を促します。
また、「花売りのおばあさん」は花蓮の山沿いの洞窟に作られた廃倉庫を起点に制作された作品です。戦時中日本軍が使用していた倉庫は、現在は扉が固く閉ざされていて、生い茂る植物の奥へと隠され、消え入りそうに見えます。かつて軍の慰安所としても使われていたという史実が、台北の街で買った白いバラの花の記憶に重なり、並べられます。
上原は丹念に場所を足でたどり、その場が紡いできたであろう時間の痕跡を確かめるように見つめています。さらに、過去の時間のなかに身体ごと入り込み、想像するための実践として、私的な空間に事物を持ち帰り、手で触れる瞬間を写真に収めています。それは上原が生まれ育った沖縄に流れる時間とも折り重なり、現在まで続く島々の関係性や複数の歴史についても考えを巡らせることになります。
本展では2016年から2022年にかけて沖縄島で撮影されたシリーズ、「眠る木」(2016年から2021年制作「The Others」を含む)からもその一部を展示いたします。