Jae-eun Choi 崔在銀
Paper Poem
Date: Friday October 20 – Saturday December 2, 2017
PRESS RELEASE
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1953年ソウル生まれ、1972年の来日を機に生け花に魅せられた崔在銀は、草月流の三代目家元・勅使河原宏に師事、器に花を生けるという生け花の表層を超えて、その空間概念や宇宙観を学びます。
1980年代から生命や時間をテーマに制作してきた崔が、今回MISA SHIN GALLERYで展示する「Paper Poem」は、崔が2010年から2016年に渡りドイツを拠点に制作した連作です。当時住んでいたベルリンのアパートのゴミ捨て場に、古本が捨てられる様子を目にした崔は、それらを自分のアトリエに運び込みます。そして古本から何も印刷されていない見返り紙や遊び紙のページを切り取りコラージュを制作します。19世紀後半から20世紀にかけて生産された紙は、時間と露光によって淵が焼け、重なり合うページの繊細な色調は、何層にも堆積した時間となってフレームの中に集結します。そのコラージュのグラデーションに見られる構造主義的なコンポジションは、真上から見た都市における建物のようでもあります。
過去30年間に渡って崔の作品に通奏低音のように横たわる時間において、とりわけ樹の時間は人間の時間と対比されながらも、永遠とも思える長い周期を廻る生命の連続性からなっています。Paper Poemにおける紙とは、単に古びた紙ではなく、樹の時間が人間の知恵と記憶の時間に変容し結実したものであることを示唆しています。
本展では Paper Poem と関連して樹の彫刻が設置されます。彫刻の周囲の床には古い紙に書かれた詩が丸めて置かれ、鑑賞者はその紙に書かれた詩を拾って読むことができます。読み終えるとまた床に戻され、次の鑑賞者によって読まれ、紙は柔らかな感触を持った物質へと変化して行き、展覧会の会期が終わる頃には、別の詩へと循環して行きます。
崔在銀
1953年ソウル生まれ。76年より東京に在住し、草月流で華道を学ぶ。80年代から生命や時間をテーマに作品を発表しはじめる。91年サンパウロ・ビエンナーレ、95年には日本代表の1人として第46回ヴェネチア ビエンナーレに参加、2016年に第15回ヴェネチア建築ビエンナーレに出品するなど国際展への参加多数。主な個展として、「ルーシーと彼女の時間」サムソンロダンギャラリー(ソウル 2007年)、「アショカの森」原美術館(東京 2010年)、プラハ国立ギャラリー(2014年)など。現在、韓国のDMZ(Demilitarized Zone:非武装地帯)において「Dreaming of Earth(夢の庭園)」プロジェクトが進行中。