Ozawa Tsuyoshi 小沢 剛
Can You Do It? できるかな
Date: Tuesday, March 19 – Thursday, May 2, 2013
PRESS RELEASE
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小沢剛は1965年東京生まれ、時代や 歴史を見つめ、しなやかな感性と創造力で、ユーモアと機知に富んだ作品で知られるアーティストです。
日本国内をはじめ世界各地で手描きの小さな地蔵を写真に収めた「地蔵建立」シリーズに始まり、懐かしい牛乳箱をギャラリーに見立てた「なすび画廊」、食材で作った武器を構えたポートレート「ベジタブルウェポン」など、小沢の多様で多彩な作品は、批判精神を含みながら、声高に訴えずとも見る人の心にするりと入り込んでくる不思議なぬくもりがあります。また、醤油で歴史の名画を描く「醤油画」は日本が置かれている美術の状況をやんわりとあぶり出します。
世界中を旅し、さまざまな出会いが作品に繋がって行く小沢ですが、今回の展示となる「できるかな」は、個人的な経験から始まりました。
小沢は、2010年、往年の幼児教育番組「できるかな」ののっぽさんに扮し府中市美術館で公開制作を行いました。美術館のスタジオに持ち込んだ古い嫁入り箪笥は義母の遺品です。故人が集めたハギレ、紙袋、空き缶、空き瓶、割り箸、針金ハンガーなど細々とした品は、生前にいつか使うつもりで集めたありふれたモノで、モノとしての価値はほとんどありません。のっぽさんに扮した小沢は、紙袋を細かくちぎってミキサーにかけ小さな紙袋型に成形したり、キャンバスに貼られたハギレの柄を一度塗りつぶした後再び油絵で柄を描いたりと、そのモノの形や色をトレースする作業を黙々と続けます。それは、価値がないと捨てられる品々を、モノ自体に還元させ、その使命を遂げさせる行為でもありました。
翌年「会津・漆の芸術祭」に「できるかな」を展示することになる小沢は、漆職人とのコラボレーションを試み、義母の嫁入りタンスの化粧板の木目を会津塗でトレースします。それは一人の女性のプライベートな記憶のトレースから、地震と津波によって家財道具を失ってしまった人たちの日常の記憶のトレースへとつながり、とるに足りない日用品であっても、そこにはそれぞれのかけがえのない記憶と時間が刻まれていることを想起させます。
「できるかな」は、小沢自身の個人的な経験から始まり、二度に渡る制作プロセスを経てやがて誰もが共有する普遍性をもった記憶や体験へと進化して行きます。
小沢 剛
1965年東京生まれ。東京芸術大学壁画科卒業。ヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ海外の展覧会に数多く参加し、森美術館「同時に答えろYesとNo!」(2004)、広島市現代美術館「透明ランナーは走りつづける」(2009)で個展を開催。ZKM, 国立国際美術館、UBS, 鎌田醤油など国内外の美術館、企業に所蔵されている。