Tomatsu Shomei 東松 照明
Chewing Gum and Chocolate チューインガムとチョコレート
Date: Tuesday, March 1 – Saturday, April 9, 2016
PRESS RELEASE
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MISA SHIN GALLERYは、戦後の日本を代表する写真家、東松照明の展覧会「チューインガムとチョコレート」を開催いたします。
日本の戦後史を一口で特徴づけよと問われれば、ぼくはためらいなくアメリカニゼーションと答えるだろう。アメリカニゼーションは米軍基地から始まった、という実感がぼくにはある。アメリカが基地にはりめぐらされた金網から、じわじわっとはみ出して、やがて日本全土に染みとおっていったというイメージだ。
1959年、写真雑誌「アサヒカメラ」に「基地-ヨコスカ」を発表した東松は、以来、千歳、三沢、岩国、佐世保など全国の米軍基地のある都市に取材旅行へと出かけます。街中を闊歩するアメリカ兵、あふれる英文字の看板、米軍相手の店―日本の日常に入り込む異なる文化の並列を写し取った写真は、すぐさまテーマ性を帯びるようになり、1960年に発表された一連の作品には「とつぜん 与えられた 奇妙な果実 それをぼくは <占領>と呼ぶ」という一文が冠され、モンタージュやアレ・ブレによる強烈なイメージが焼き付けられています。
1969年、基地を巡る旅の最終地として初めて沖縄を訪れた東松は、「沖縄のなかに基地があるのではなく、基地のなかに沖縄がある」というグラフィックな効果を伴ったテキストを、米軍機の写真に挿入した鮮烈な作品を発表します。以来、東松は沖縄への旅を重ね、米軍基地という巨大な不条理との対峙を余儀なくされた沖縄の戦後が、日本復帰を前に激しく揺れ動く様を撮影しています。
駐留アメリカ兵に向けられた視線、そしてアメリカ化していく日本。異なる2つの眼差しを持ちながら合わせ鏡のように存在する占領という現実を、約二十年に渡る基地の都市への旅で撮影したシリーズ、「チューインガムとチョコレート」は、戦後の日本に入り込んで来た最大の異文化の表象であるのみならず、ペンキが剥げてもなおその痕跡を残すコカコーラのサインのように、今も続く戦後日本の思想として象徴的に提示しています。
東松 照明
1930年‒2012年。戦後の日本を代表する写真家。愛知大学経済学部を卒業後上京し、岩波写真文庫でカメラスタッフを経て、フリーランスとなる。1950年代から数々の作品を発表し、近年の写真家に多大な影響を与えた。「Shomei Tomatsu: Skin of the Nation」サンフランシスコ近代美術館(2004年)、「東松照明:Tokyo曼陀羅」東京都写真美術館(2007年)、「時を削る」長崎県美術館(2010年)、写真家:東松照明全仕事」 名古屋市美術館(2011年)、「Shomei Tomatsu: Island Life」 シカゴ美術館(2013年)などの個展が国内外で開催されている。