Hikosaka Naoyoshi, No.1 Floor Event, 1970/2017, Photograph(gelatin silverprint), 20.3×25.4cm
彦坂尚嘉と堀川紀夫(新潟現代美術家集団GUN)は2022年7月16日から、東京都現代美術館「MOTコレクション コレクションを巻き戻す 2nd」に参加いたします。
彦坂からは「フロア・イベント No.1 」と「個展[REVOLUTION]案内はがき]の2作品を出品し、堀川紀夫(新潟現代美術家集 団GUN)からは「雪のイメージを変えるイベント」を出品いたします。ぜひご高覧ください。
MOTコレクション コレクションを巻き戻す 2nd
会期: 2022年7月16日(土)- 10月16日(日)
休館日: 月曜日(7月18日、9月19日、10月10日は開館)、7月19日、9月20日、10月11日
開館時間: 10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
会場: 東京都現代美術館 コレクション展示室
フロア・イベント
1970年に行われた彦坂のパフォーマンス、「フロア・イベント」は、第1回美共闘Revolution委員会がプロデュースした「1年間、美術館と画廊を使用せずに、おのおの1回ずつ有を開催する」という個展シリーズの準備として計画、実行されました。全裸で自室八畳間と縁側に工業用ゴムであるラテックスを撒き、友人でアーティストの小柳幹夫がパフォーマンスを補助、現代音楽家の刀根康尚が彦坂の用意したカメラでその行為を撮影し、パフォーマンスの後、畳の上でラテックスが乾いて乳白色から透明になっていく過程を彦坂自身が撮影しました。この時の個展では小柳と刀根が唯一の目撃者となり、観客はおらず、乾いたラテックスは10日後に床からはがされました。彦坂はこれらの記録写真をのちに作品として展示し流通させる構想を持ちます。激しいアクションで撒き散らすのではなく、絵画的な手法で淡々と手箒で丁寧に薄く広げられた乳白色のラテックスは、畳を覆い尽くし、そこに現れるニュートラルな表層は、日本家屋の日常空間を突如異化します。しかし、乾いて透明な皮膜となったラテックスの下から立ち現れる「床を見る」ことが「自らの拠って立つ足場を考察する」認識を浮かびあがらせ、このコンセプトは以降の彦坂の作品において、反覆と多様性をもって形を変えながら展開していきます。
雪のイメージを変えるイベント
1946 年新潟県中頸城郡(現・上越市)に生まれた堀川紀夫は、1967 年、前山忠、市橋哲夫らをリーダーとする現代美術グループ「新潟現代美術家集団 GUN(Group Ultra Niigata)」の結成に参加。GUN の主要メンバーとしてまた堀川個人としても、新潟県内を拠点にパフォーマンスや制作活動を行ってきました。
1970 年 2 月、十日町を流れる信濃川の河川敷の大雪原を舞台に、農業用の噴霧器で赤、青、黄、緑の四色の顔料を撒き散らしながら描いた巨大な抽象画「雪のイメージを変えるイベント」は、半裸の堀川が赤い顔料の噴霧器を背負い雪に挑んでいる姿とともに羽永、磯俊一によって撮影されました。GUN の活動は新潟という地方を拠点としながら、1960 年代後半から 1970 年代前半にかけて、ランドアートやコンセプチュアルアート、ポリティカルアートなど、世界的な美術の潮流と同調していました。
しかし、ウォルター・デ・マリアなどのアメリカのランドアートが、過熱した商業主義への批判として遠隔の地に崇高を求め、自然に向かったのに対し、現代美術市場が萌芽状態であった日本において、河川敷は、美術館などの「制度外」の選択肢の一つとして機能していました。降り続ける雪のため 30 分と存在しなかった雪原上の絵画は、日本を代表するランドアートの一つに数えられるでしょう。
About the Artist
彦坂尚嘉
1946年、東京生まれ。美術表現の制度そのものを根元から問い直し 70年代以降の日本のコンセプチュアルアートを主導したアーティス トの一人。1967年多摩美術大学油彩科に入学、1969年に掘浩哉らとともに、「美術家共闘会議」を結成。1999年「Global Conceptualism: Points of Origin, 1950s-1980s」クイーンズ美術館(ニューヨーク)他アメリカ国内3カ所巡回、2001 年「CENTURY CITY」テートモダン(ロ ンドン)、2007 年「Art, Anti-Art, Non-Art: Experimentations in the Public Sphere in Postwar Japan, 1950-1970」Getty Center, Research Institute Exhibition Galler(y ロサンジェルス)、2013 年「あいちトリエンナーレ」愛知県立美術館、2015 年「Re:play 1972/2015『- 映像表現 ’72』」東京国立近代美術館など国内外の展覧会に参加。国立国際美術館、豊田市美術館、The Getty Research Institute(ロサンジェルス)を はじめパブリックコレクション多数。
堀川紀夫
1946年新潟県中頸城郡(現・上越市)に生まれ。1967年、前山忠、市橋哲夫らをリーダーとする現代美術グループ「新潟現代美術家集団GUN(Group Ultra Niigata)」の結成に参加。主な展覧会に「Century City」テート・モダン(ロンドン 2001年)、「Art, Anti-Art, Non-Art: Experimentations in the Public Sphere in Postwar Japan, 1950-1970」Getty Center, Research Institute Exhibition Gallery(ロサンジェルス 2007年)、「越後妻有アートトリエンナーレ」(新潟 2000年・2009年)など。 2019年3月ニューヨークのJapan Societyで開催される「荒野のラジカリズム グローバル60年代の日本の現代美術家たち」に参加。